(この物語は実際の作業工程を追ったものですが、登場人物とその会話は一部フィクションです。)
さて、どこから手を付けようか。
「とりあえず車検を取ってよ」とケンジ君。とりあえずと言われてもそう簡単じゃないよ。
写真で見るとそんなでも無く見えるかも知れないが、現物は「超」キタナイ。昔は汚いバイクのことを「炭屋のバイクが田んぼに落ちたみたい」なんて言ったものだが・・・。ともかくまずは、洗車からだな。
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10数年間に積もったホコリを落としてみると「意外とキレイ」じゃないか。
エンジンの塗装はだいぶ剥げてしまっているが、タンクなんかけっこう艶も残っている。
「ホコリがコーティングの役目をしてたんじゃない」とケンジ君。
そんな事はないよ〜。
屋根付きの車庫に置いてあったからよかったけど、雨ざらしだったらとっくにクズ鉄になってたところ。 |
一見キレイになったところで、エンジンから見てみよう。
圧縮が落ちてたら「とりあえず車検」という訳に行かなくなるしね。
ちなみに、「とりあえず・・・」はケンジ君の口癖。
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タンクを外すとこんな状態。
プラグを外し、プラグ穴からオイルを少々。ジャンピングしてしばらくクランキング。
「さて、そろそろ良いかな」と圧縮測定。
1番OK、2番OK、「オッ、大丈夫かな?」、3番・・・「アレ?」、4番OK。
3番が他と比べて2kばかり低い。
「ケンジ君、バルブのすり合わせくらいしようか?」
「エンジン掛かればとりあえずこのまま・・・、掛けてれば圧縮戻らないかな?」
「う〜ん・・・。」
とりあえず掛けてみようか。(おっと、ケンジ君の口癖がうつった)
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プラグに全て火が飛ぶことを確認して、キャブに取り掛かる。
キャブを外してみると案外キレイ。開けてみても中もキレイ。ジェットの詰まりも無いし、本体の通路も一応全部通っている。
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「ちゃんとガソリン抜いておいたんだね」「いや〜、覚えてない・・・」 |
このままでもエンジンは掛かりそうだけど「ちゃんとオーバーホール(以下OH)しておこうか?」「でも、金掛かるでしょ?」そりゃそうだ!
「とりあえずそのままで・・・」
「とりあえず」キャブはそのまま取り付けて、クリーナーボックスも・・・、あっ、エアーエレメントが無いんだ。じゃぁ、ボックスも無しでいいか。
とりあえずだからね。
さて、ガソリンを送ってと。オーバーフローはしてないな、よし!ジャンピングしてセルを回すと「キュルキュルキュル、バオ〜ン!」掛かった!
調子も絶好調とは言えないが、「とりあえず車検」ならOKのレベル。10何年ぶりにしては立派なもんだ。
「ケンジ君、良かったね」「Z系のエンジンって丈夫なんだな」「そうね」
さて、次は大問題のブレーキだな・・・。
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