*その

(この物語は実際の作業工程を追ったものですが、登場人物とその会話は一部フィクションです。)


ブレーキに取り掛かる前にエンジンの圧縮を再測定。3番の圧縮が他と比べて1k位の差になっている。バルブの当たり面のサビが落ちたのかな?しばらく様子を見ようか?

さてブレーキ、まずはフロントから。何と言っても握るたびにロックしっぱなしになるので押して歩くのが大変。これを何とかしなきゃ。
本当だったらAssyで交換したい所だが、ケンジ君の「なるべく金を掛けず、とりあえず車検」という希望を尊重し、まずはブレーキフルードの抜き換えを。ヘドロのようなフルードを洗い流し、吸出し、押し出し、掻き取り、マスターとキャリパーを無理やり動くようにする。
効きはあまいが何とかロックはしなくなった。


リヤは全く油圧が掛からない状態。こちらはOHしなきゃ絶対だめ。
マスターシリンダー本体も交換したいが・・・。
出てきたマスターシリンダーの中身。
これは交換しなくちゃダメ。

リヤブレーキも何とか効くようにはなったが、効きはかなりあまい。
これはバックステップの影響もかなりある。ブレーキペダルのピボットは一緒でペダルの長さが半分以下なんだから、テコの原理で言うと2倍以上の力で踏まなくちゃいけない事になる。
まあ、車検は何とかなるだろうが、実際に走るとどうだろう?
「とりあえず乗ってみるよ」とケンジ君。

よし!次は車検だ。ところが・・・。


車検証を見ながら「初年度登録は79年か〜」「車検が切れてからもう15年も経ってるんだね」などとケンジ君と話していた時、まずい事に気が付いた。
「ねえ、ケンジ君。自動車税払ってる?」「最初は払ってたけど、ここ何年かは税金の請求が来ないんだけど」「あっ!やっぱり!」

そう、車検を取らずに何年も経つと、「乗らないなら抹消(廃車)しますよ」というハガキ(もちろん本物はお役所言葉で書いてある)が陸事から来る。この時に車検を取るとかナンバーを返して廃車の手続きをするとかすれば良いんだが、放っておくとナンバーが付いたまま登録を抹消されてしまう。これを職権抹消という。
このこと自体は無駄な税金を払わなくて良くなるんだから、ありがたいことなんだが、今回のようにもう一度車検を取ろうとする時には問題になる。
一応、建前としては「職権で抹消された車(バイク)は再使用できない」ということになる。
しかし、実際は「通常の手続きでは出来ない」ということで、「個別案件」として処理し再登録(正確には車検証復活)することはできる。
具体的には陸事に行って「頭を下げて頼む」ということ。そうすると「しょうがないな、今回だけだよ」という事で(こんなに簡単じゃないが)車検証が復活する事になる。

そして、復活したものを正式に廃車して、その廃車証で車検を取って再登録(いわゆる中古新規登録)ということになる。これはこれで複雑なんだが納税証明が無くて済むのが大きな利点。何たってここ何年も税金を払ってないんだから、普通に申請しても納税証明は取れない。

しかし、今回は「ナンバーはこのまま使いたい」とケンジ君が言うものだから、陸事と役所を行ったり来たり。
陸事では「納税証明が取れるなら出す」と言うし、役所では「そんな昔の車検証が本当に復活できるのか」なんて言われるし。

結局5年分の自動車税を納めることで手を打った(?)。


通常の車検整備は特に問題も無く終了。

タンクの中を掃除する。
Z2のタンクにFX−1のコックを付ける加工がしてあった。
当たり前だが、普通はボルトが入る所には裏にナットが溶接してあるが、これは何と!普通のナットで止まっていた。ボルトを外したらタンクの中にナットが「カラン!」と落ちてビックリ。

「さて、どうやって付けるか?」
マフラーのステーが折れてる。
これは溶接か、ステーを作るか。

某月某日、車検場へ。

車検ラインでは何の問題も無く、すんなり通った。
実際にはハンドルが低く短い物が付いているので、構造変更ということになったが。さあこれで再登録完了!

ケンジ君!「とりあえず」乗れるよ!

しかし、車検場の中を少し走っただけで、いくつも問題が・・・。


続きは*その4へ