*その4 |
(この物語は実際の作業工程を追ったものですが、登場人物とその会話は一部フィクションです。)
車検場の中は徐行が基本。ライン(検査する所)は勿論、駐車場内でも徐行。ところが最近は無茶するヤツが多いし事故も時々あるようだ。
こんな所で飛ばしてもしょうがないだろ、と思うがこういう手合いはどこにでもいるもんで、そういえばモトクロス場でもパドックでがんばっている(?)人を時々見かける。こういう人に限ってコースに入るとおとなしい。
それはさておき、車検場内は徐行。そのスピードで走っていて「これはマズイな・・・」という所がいくつも出てきた。
ブレーキ、キャブ、サス、タイヤ・・・。全部じゃないか!よく車検が通ったね(オイオイ・・・)。まあ、ここだけの話、車検ってこんなもん。過信しちゃいけません。
「車検が取れたらとりあえずそれで乗ってみるよ」と言っていたケンジ君だが、ちょっと一回り試乗をしただけで「・・・ダメだぁ。まずはブレーキ?」「全部だと思うよ」「とりあえずブレーキをやって・・・。後は乗ってみて考える」「全部やらなきゃダメだと思うよ・・・」「う〜ん・・・。ちょっと考えさせて」
そして3日後に電話が。
「全部やって!ブレーキは○○に交換、インナーチューブを替えて、タイヤを替えて、それから・・・」
「オイオイ、ずいぶん思い切ったね。大丈夫なの?」
「うん、どうせなら徹底的に!」
なるべく安くじゃなかったの?まあいいか・・・。
という訳で、まずは足回りから・・・。
インナーチューブはサビがひどい。これは交換するしかないのだが純正のインナーチューブは販売終了。Z1のインナーチューブはまだ有るのに何で新しい方のFX−1のが無くなっているの?人気の差かな? しかしこの辺がZ系の良い所で社外パーツがほとんど何でも有るくらい豊富。極端な話フレームとクランクケースが有れば一台組めるくらい何でも出ている。勿論FX−1のインナーチューブも有る。 今回使ったのはアメリカ製でフランクス社の製品。セットで37,000円。 シール類も社外品が有るが、純正がまだ有るのでこちらを使う。 |
これだけサビてればオイルも漏れる。 |
作業中 |
フロントブレ−キは車検前にバラシた感じではマスターはOHすれば使えそうだがキャリパーは多分ダメ。効きも思いっきり握れば何とか止まるが(だから車検はOKだった)、実走行ではちょっと使えない状態。掛け始めが全然効かずにギュッと握るとガツンと効いちゃう。 キャリパーだけ社外品に交換でも良いんだが、ケンジ君は「どうせならセットで替えちゃってよ。これが良いと思うんだけど」と言ってきたのが、APレーシングキャリパー!対向2ポットのクラシックなタイプ。 「昔、モリワキモンスターに付いてたやつじゃない?」「そう!」 確かに年代的にもデザイン的にも合うし、サスがノーマルなんだから効きも丁度良いんじゃない? これに、マスター、アールズのホース、キャリパーサポートがセットで85,000円というのは安い!当時(20年位前)は倍ぐらいしたんじゃなかったか? |
APレーシングのキャリパー |
専用サポート、これにマスターとホースで1セット |
取り付けはボルトオン、のはずだが実際に付けてみるとホイールとのクリアランスが極少で、シムを挟んで微調整が必要だった。 エア抜きはブリーザーの位置が悪くてちょっとやっかい。まあ、昔の設計だからこんなもんでしょう。作りは思っていたよりずっといい。 |
キャリパーのデザインは予想どうり良く似合う。しかし、タンク別体式のマスターはデザイン的にイマイチ? ケンジ君も「これは失敗だったかな?」 リヤブレーキは相変わらず効かないが、これはバックステップの責任が大きい。これもステップ込みでブレーキ全取っ替えを検討したんだが「フロントが効くようになればリヤはこれでも大丈夫かもしれない」ということと「なるべく安く」ということでそのまま乗ってみることに。 「でも、もうあんまり安くなくなってるよ」「その中でなるべく安く・・・」ハイハイ。 |
フロントフェンダーも交換。 「ノーマルフェンダーの重そうな形がいや」なんだそうで、Z750LTDのフェンダーを取り付けることに。これは簡単、と思っていたが取り付けの穴を全て開け直すことに。 |
タイヤはBSのAC‐01、02。サイズはフロント3,50−19、リヤ4,00−18でスンナリ決まり。クラシックなパターンが良く似合う。性能も20年前のハイグリップタイヤより良いんじゃないか。 ついでにケンジ君の希望でホイールベアリングとハブダンパーを交換。 ここでケンジ君が「ホイールを黒に塗装してくれない?」と言い出した。「絶対その方がカッコいいと思うんだ」 「でも、本格的に塗装するとなると結構費用が掛かるよ」「外したついでにスプレーでシュッと吹いといてくれればいいから」「そんな簡単に言うけどね・・・」「細かい事は言わないからやってよ」「う〜ん・・・」仕方が無いな、何とかしよう。 塗装は下地が大事。せっせとサビと汚れを落とす。とはいえ完全には無理(無理じゃないけど大変な手間がかかる)なのでそんな時用の裏技を使う。 といっても大した事じゃない。マフラーやエンジン用の半つや消し耐熱塗料を使うだけ。この塗料は乗りが良く塗りムラが目立たない。不完全な下地でも(一見)きれいに仕上がる。 で、塗装したホイールを組んでみると「カッコイイじゃない!さすがケンジ君、センス良いね」 |
フロントフォークを抜いたついでに、ライトステーをアルミ製のものに交換。ウインカーも小型のものに交換。三叉の前に付いていたメッキのカバーもサビて汚かったので取り外し。 これで見た目もずいぶんスッキリしてきた。 |
この状態で試乗。 これだけやれば当たり前だがこれはもう全く別物。ブレーキは当たりがまだ付いていないがそれでも充分に効くし、タイヤとサスがしっかりと接地感を伝えてくれる。前のタイヤは石のように硬くなっていたから(15年前のタイヤじゃしょうがない)、戦車からリムジンに乗換えたくらいの(どっちも乗ったことは無いが)違いが有る。 ケンジ君も「全然違う!これなら安心して飛ばせる」とOKサイン。 足回りはこれでいいだろう。 では次はエンジン。まずキャブはどうする?ケンジ君。 |
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