*その

(この物語は実際の作業工程を追ったものですが、登場人物とその会話は一部フィクションです。)


「Zっていいバイクだったんだね」とケンジ君。手に入れた当時、ちょっと乗って「つまんないバイクだな」と思ってガレージの奥に放っていたらしい。
そりゃあ、その前に乗っていたZ2がメチャクチャいじってあったんだから当たり前。「ちゃんと手を掛けてやればこんなに良くなるんだね。このZに失礼していたんだな」と反省しておりました。

時々立ち寄っては「すっごくいいよ!」と嬉しそう。そんなある日、ケンジ君から電話が・・・。
「キャブからオーバーフローしちゃってるんだけど、取りに来てくれる?」「ハイよっ!」


持ってきて見てみると、フィルターにゴミがずいぶん溜まっている。
かなり細かいゴミなのでフィルターを通ってしまったようだ。

タンクの中を洗った時、そんなにゴミは出なかった。見える範囲にはサビも無く大丈夫だと思ったが、念のためフィルターを入れておいた。
しかし、この細かいゴミは明らかにサビ。コックのフィルターとこの外付けのフィルターを通っちゃうくらい細かいということは、薄っすらとけっこう広くサビが出てるということ。

「タンクの中をサビ止めしないとダメだね」「じゃぁ、新品に替えちゃおう」「もう部品が出ないよ」「いや、持ってるから」「エッ!」

何でも、何年か前に使い道は特に考えず、「もう、新品は手に入らないよ」と言われて買ったらしい。そういえば、カワサキがZ2の外装パーツを限定再発売した事があったな。


手前の汚く見える方が新品。
エンブレムが古いタイプが付いてる。
元々だか自分で替えたのかは「覚えていない・・・」

シートは「ついでにアンコ抜きしといて」「ハイハイ」

さて、持ってきたついでに(?)気になっていた点火系を見ておこうか。

点火系でまず目に付くのがプラグキャップとプラグコード。


キャップはプラグへの差込が緩くなって来ているし、コードはキャップにはめ込む部分が裂けて来ている。コードは裂けてる部分を切り詰めてやれば良いんだが、もうすでにだいぶ切り詰めていて今でもギリギリの接続になっているので、これ以上切り詰めるのは無理。

コードを交換といっても純正ではコードだけでは出ていない。コイルと一体なのでコイルごとの交換ということになるんだが、純正コイルは販売中止。となると今付いてるコードを切って途中から社外品のコードに交換するか、いっそコイルも社外品に交換か?


ケンジ君の結論はやっぱり「古くなっているのは間違いないんだから全部替えて!」
全部って何処まで?
「プラグキャップ、コード、コイル、それにイグナイターにピックアップコイルも替えた方がいいんじゃないかな?」
ちょっと待って、イグナイターはいいんじゃない?高いし。ましてピックアップは必要ないでしょ。
「でも、車でもデスビのキャップを替えると変るよ」
それとは違います・・・。


プラグキャップはそんなに考えずNGKの一番安い昔からある物。シンプルなデザインが良く似合う。
最近の派手な色やデザインの物は「Z」には似合わない。

コードも最近の高性能をうたう物は派手なカラーの物が多く、シンプルな物が意外と無い。そこで手持ちの普通の黒いプラグコードを使う事に。

さて、コイルだがFX−1用の純正コイルはもう無い。他の車種の物を流用する手もあるんだが、他車種の物というのは意外と収まりが悪かったりすることが多い。その車種専用に出来ているんだから当然かもしれないが。それに「純正品じゃ面白みが無い」というケンジ君の意見もあり社外品を探す。
条件は、当たり前だがノーマルのコイルと同じ場所に収まる事、プラグコードが付いていない事(コードが付いているのは大体が派手な色をしてるし、コードを切って途中から繋ぐのは避けたいから)、そして最後に安い事。


そして選んだのがこれ。広告が「ドラッグレースに最適」みたいなのがちょっと気にはなるが、まあ問題ないだろう。安いし。

取り付けは何の問題も無くスンナリと・・・のはずだったが、一つだけ大変だったのがコイルにコードを取り付けるところ。
コードの先に金具を取り付けてそれを押し込むんだが、これが硬いのなんのって、プレスでも使いたくなったくらい。丈夫に付くのは結構だが、これじゃコードの交換は絶対出来ない。コードがダメになったらコイルごと交換?


ノーマルと同じ場所に何とか押し込む。

試乗してみると、当然のことだが特に変化は感じられない。一つ二つの部品を替えて乗り味がガラッと変ったら、替える前の部品が相当悪かったと言う事になる。
さて問題のプラグの焼け具合だが、いくらか良くなったかな?という程度。期待していた程の改善は見られなかった。
キャブセッティングを見直さないといけないかな?

「とりあえずこれで乗ってみるよ」とケンジ君。
うん、それじゃ様子を見てね。

その後しばらくは何事もなく、ケンジ君からも何も連絡が無かった。
「便りの無いのは無事なしるし」という諺のとうり、何も言って来ないんだから「無事に走っているんだろう」と思い始めた頃、ケンジ君から電話が。
さて、今度は何だろう?


続きは*その7へ