*その

(この物語は実際の作業工程を追ったものですが、登場人物とその会話は一部フィクションです。)


さて、どうしよう?といってもどうしようもない。
ヘッド回りは予定どうりOH。
「ヨシムラのヘッドガスケットを取るんだったら、ついでにピストンリングも取って替えようか?」とケンジ君。
ヘッドガスケットはヨシムラのを取らなくちゃしょうが無いが・・・。リングはいいんじゃない?だってこのピストンほとんど新品みたいだよ。

このZ、手に入れてからどの位走ってるんだっけ?
「確か100キロも走ってないと思う」

たぶん前の持ち主は手放す直前にヨシムラのピストンを組んだんだと思うよ。シリンダーだってホーニングの痕が新品同様に残ってるもの。
「じゃあいいや」「実はエンジンを開けたついでに、ボアアップでもしてやろうかなんてちょっと思ってたんだけど、もうやってあったんだね。ラッキー!」と、どこまでもポジティブなケンジ君でした。


ヘッドのガイド交換はボーリング屋さんの仕事。今回はついでにシートカットもお願いした。


そして待つ事1週間。出来て来ました。
シートカットまで終っていれば、後はスリ合わせて組んでいくだけ。

Zの場合、4気筒とはいえ2バルブだからスリ合わせも8個ですむから楽なもの。バルブもデカイし。
これが250の4気筒4バルブなんかだと小さなバルブが16個だから結構疲れる。


すり合わせ完了。
新品のキャブホルダーを付ける。


バイクの部品の名前って、メーカーにより人により色々な呼び方がある。
このキャブホルダーも、他にインシュレーターだったりマニホールドだったり4輪だとインマニ(インテークマニホールド)なんて呼ぶ事もある。

ところですり合わせに使う写真の下に写っている木の棒の先に吸盤がついた道具、うちでは「タコ棒」と呼んでいるが正式名称は何ていうんだろう?


さて、後は組むだけ。いやいや例のボルトの問題がありました。


右がノーマルのボルト。左が例の問題ボルト。

ヘッドのネジ穴はすでにヘリサートで修正済みだが、ヘリサートに限らずネジ穴を修正した時に一番問題になるのがきちんと垂直が出てるかどうか。
今は道具が良くなっているのでまずほとんど問題になるような傾きは出ないが、今回はなんと言ってもカムホルダー。
ここはほんの僅かのズレでもカムが焼きつく恐れがある。

慎重に芯出しをしながら組んでいく。


なんとか無事に組み上がり。

エンジンを掛ける前に圧縮を測定。当然ながらしっかり上がっている。さすがハイコンプピストン。OHする前はノーマルだと思っていたから「少し圧縮が落ちてるな」位に思っていたが、ハイコンプピストンが入っていたんだからずいぶん下がっていたのね。

さあ、これで調子がよくなるぞ。と思って試乗してみると・・・、「アレレ?」

前のままのセッティングじゃ全然走らない・・・。


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